ピッチクロックとは、2022年9月にMLB(メジャーリーグベースボール)が発表した新しい野球のルールです。
簡単に言うと、野球ファン離れ防止のための試合時間短縮を目的として、投手及び打者のルーティン時間に制限を設け、違反した場合(時間を超過した場合)にペナルティを与えるというもの。
実はこれまでには、マイナーリーグやアメリカ大学野球などで、塁上に走者がいない場合に限定してピッチクロックを行うことがありました。
MLBの場合は、塁上の走者の有無にかかわらずピッチクロックを適用し、2023年のオープン戦から導入しています。
さらに他にも、MLBではいくつかのルールや仕様が変更となりましたので、そちらについても解説していきます。
MLBにおけるピッチクロックとは?新ルールなどを解説
ピッチクロック違反とは何か?
ピッチャーに適応されるピッチクロック
ピッチクロックは、ピッチャーとバッターとでルールが違います。
まずピッチャーのピッチクロックとは、投球間に設けられた制限時間のルールのことです。
これは、塁上にランナーがいる場合といない場合とでルールが異なります。
ランナーがいる場合、ピッチャーはボールを受け取ってから投球動作を開始するまで20秒以内に行わなければなりません。
キャッチャー又は審判からボールを受け取った瞬間からカウントされ、サインを確認してから球を投げるために足を上げるところまでを20秒以内に行うということ。
そして、塁上にランナーが一人もいなければ、これを20秒ではなく15秒以内に行わなければならないんです。
もし時間を超過した場合、ボール宣告され、1ボールを相手バッターにプレゼントする形となります。
また、バッターがまだ準備できていないにもかかわらず投球動作を開始すると、同じく違反となり、1ボールをカウントされます。
遅くても早すぎてもダメということですね。
バッターに適応されるピッチクロック
バッターの場合、ピッチクロックの制限時間が8秒です。
ただしバッターは、8秒以内に構える必要はありません。
例えば、バットをまだ下でユラユラ振っていても違反にはならないんです。
ではどうした場合に違反になるかというと、相手ピッチャーに顔を向けていなかった場合。
下などを見ていて、ピッチャーの方を向かずに8秒経った場合は違反となり、1ストライクカウントされます。
ピッチクロック以外の新ルール
けん制球の回数制限
これまでは無制限だったけん制(ピッチャーがプレートから足を外す行為)にも、2回までと回数が決められました。
3回目を行う場合、相手ランナーをアウトにできなければボークとみなされ、相手ランナーは進塁することとなります。
これは、仮に俊足のランナーがいた場合、ピッチャーにとっては相当プレッシャーになるルール変更となりました。
その証拠に、開幕戦では、盗塁成功率がなんと90%以上だった試合もあったほどです。
極端な守備シフトの禁止
よく「大谷シフト」などという言葉を聞きますが、これまでは、データに基づいて強打者などを相手に、アウトを取りやすいシフトで守ることが度々ありました。
その守備シフトの変更が、2023年から禁止となりました。
具体的には、ピッチャーが投球動作に入るまでは、内野手を内野に最低4人置かなければならず、しかもセカンドベースを挟んで両側に2人ずついないといけないというもの。
(ピッチャーが投げた後はどこへ動いても良い。)
さらに、内野手はサイドを切り替えることができません。(例:ショートの選手が一二塁間を守るなどは禁止。)
ただしこれは、内野の守備に限ったことですので、例えば外野手が内野を守ることはできます。
極端な話、一二塁間を3人かつ三遊間を4人で守り、外野はゼロなんてこともできるんです。
ベースの大きさを変更
2023年からベースの大きさが変更されました。
これまでは15インチだったものが17インチに変更され、ベースが約7.6センチ大きくなりました。
その分、塁間は11.7センチほど距離が縮みます。
これにより、怪我のリスクが下がりますし、盗塁の成功率は上がりそうですよね。
メジャー初!大谷翔平投打でピッチクロック違反
大谷翔平のピッチクロック違反
大谷翔平選手は、2023年4月5日(日本時間6日)、敵地のシアトルで行われたマリナーズ戦に、3番投手で先発しました。
そしてこの日、ピッチャー大谷でもバッター大谷でも両方ともピッチクロック違反を取られたんです。
ピッチャー大谷翔平の違反
1回裏マリナーズの攻撃、一死二塁の時に違反を取られました。
普段は左腕に「ピッチコム」という電子機器を取り付けて、自らサインを送ることによってピッチクロック対策を行っている大谷翔平選手。
この時違反を告げられた原因は、投球動作に入るのが早かったからです。
ピッチクロックを見ると、「13」(残り13秒)という表示がされており、塁上にランナーがいるため、時間的(20秒以内に投球動作開始)には問題ないことになります。
ただ審判は、マリナーズのバッター(ローリー選手)がまだ大谷翔平選手の方を向いていないと判断し、投球動作に入った大谷翔平選手をピッチクロック違反にしたのでした。
バッター大谷翔平の違反
6回表エンゼルスの攻撃、無死一塁の時に違反を取られています。
この日大谷翔平選手は第3打席でしたが、その初球、構えの遅れで1ストライクカウントされました。
結局この打席は、フルカウントの末、四球で出塁しています。
大谷翔平のピッチクロック違反はアンタッチャブルレコードか?
アンタッチャブルレコードとは「抜かれない不滅の記録」という意味で、MLBで活躍する日本人が増え、日本でも試合中継がされるようになってから知られるようになった言葉です。
現在囁かれているアンタッチャブルレコードは、イチロー選手が2004年に記録した262安打です。
この数字は、もう誰も越えられることができないのではないかと言われています。
そして今回、1試合中に投打でピッチクロック違反を取られた大谷翔平選手。
これまで投打で活躍した選手は、ベーブ・ルース(1895年〜1948年)と大谷翔平選手です。
ベーブ・ルースの時代にはピッチクロックはありませんでしたので、1試合で投打でのピッチクロック違反を取られたのは大谷選手が初めてとなります。
今後、もしかすると投打で活躍する選手がMLBに現れるかもしれませんが、今の所は大谷翔平選手ただ一人ですので、この記録がアンタッチャブルレコードになるのではないかと言われていたりもします。
“トラウタニ”発動で“なおエ”回避成功
7回表にトラウタニ発動
トラウタニとは、エンゼルスの主軸かつMVP男であるトラウト選手と同じく主軸かつMVP男である大谷翔平選手のコンビのことを指します。
とりわけ、その二人が活躍すると、トラウタニ発動と言ったりします。
そして今回、7回表にトラウタニが発動しました。
トラウト選手(2番)が打った玉はボテボテのゴロでしたが、捕球しづらい場所へボールが転がり、これが適時内野安打となって貴重な1点を追加。
続いて大谷翔平選手(3番)が見事な流し打ちを放って、さらに1点追加し、4対1にリードを広げる展開となりました。
中継ぎが崩れるもなおエ回避
「なおエ」とは、「なおエンジェルスは…」の略で、大抵の場合、大谷翔平選手が活躍したりトラウタニが発動したにもかかわらず、中継ぎが持ちこたえられずにエンジェルスが負ける時に使われます。
実は、かつてイチロー選手が活躍したのにマリナーズが負けたときも、「なおマリナーズは…」と言う意味で「なおマ」という言葉がありました。
それで今回の試合、7回表の時点でエンゼルスが4対1で3点リードしていたにもかかわらず、7回裏に中継ぎが踏ん張れずに2点とられ、マリナーズに1点差まで詰め寄られました。
エンゼルスファンからしたら、「またかよ、中継ぎいいかげんにしろよ。」といった感じですよね。
そのため、Twitterでは、「中継ぎ」や「エンゼルスの中継ぎ」が悪い意味でトレンド入りすることに。
ほんとヒヤヒヤもんです。
最後はなんとか、キハーダ投手が抑え、エンゼルスはギリギリなおエを回避して勝利。
トラウト(鮭)とキハーダ(マグロ)、という魚たち(?)の活躍もあり、大谷選手は見事勝利投手となることができました。
たまに、大谷翔平選手が活躍してエンゼルスが負けた試合で、エンゼルスの直江選手大活躍というコメントを目にします。
初めて聞いた人は、「エンゼルスに大谷翔平選手以外の日本人選手っていたっけ?」と思うかもしれませんが、もちろんいません。
これは、「なおエ=直江」と人物名に置き換えて「なおエ」をさらに皮肉った言葉です。
エンゼルスの中継ぎ陣にはもっと踏ん張ってほしいものですよね。
まとめ
- ピッチャーのピッチクロックとは投球間に設けられた制限時間のルールのこと
- 塁上に走者がいる場合は20秒以内、いない場合は15秒以内に投球動作を開始しないといけない
- バッターが構えていないのに投球動作を開始してはならない
- ピッチクロック違反をすると1ボールカウントされる
- バッターの場合のピッチクロックの制限時間は8秒
- バットを構えなくてもよいが顔をピッチャーへ向けなければならない
- ピッチクロック違反をすると1ストライクカウントされる
- けん制球の回数は2回までで3回目にアウトを取れなければボーク
- 極端な守備シフト禁止で内野にセカンドベースを挟んで2人置かなければならない
- ペースの大きさが5インチから17インチへ変更
- ピッチャーでは制限時間ではなく投球動作が早かったために違反
- バッターでも第3打席にピッチクロック違反
- 後にも先にも大谷選手ただ一人か?
- 7回表にトラウタニ発動
- 中継ぎが崩れるもなおエ回避
- 「エンゼルスの中継ぎ」が悪い意味でトレンド入り